資生堂 CM ( 2006 )



これは最も好きなCMの一つで、モデルも映像も音楽も調和していて素晴らしい感覚だと感じてます


そこで感じられることについて話をしていきたいと思います

 

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短歌や俳句に代表されるように芸術表現においてこの国では、

 

伝統的に透明感があって水のように無味無臭なものをどう洗練させていくか、

 

ということを大切にしてきました


そして
なんの特徴もないような日常を重点の置き方を変えて表現することを好みます


そのようにみていくと、この作品にはその繊細さが散りばめられています
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まずこのCMは失恋を謳ったものです


完成したり完璧なものよりは、欠けたり失ったりすることに対して美しさを感じる

 

そこからこんな表現は出てくると思うんですね


そして恋が終わったあとの女性の気持ちをテーマにしています


だから実際に失恋しているシーンそのものは描かれていません

 

このように物語の始まりや終わりをサッと出して経過に対しては空白や間をもうけて語らない

 

地味ですが上品ですよね



それは失恋した後の女性の心情とか寂しさ

 

言葉にならない何か、、

 

余韻というものを伝えようとしています

 

この女性の表情が、時間の経過とともにどんどん変わっていくのがみてとれます

 

そしてこの女性の表情の変化こそが主題になっています

 

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ものごとは途切れるのではなく過去からの流れの中で現在があり、そして未来へと続いてゆく


不変というものはないということ

 

 

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それは人間の心そのものだと思うんですが

 

水のように移ろい流れていく心というものをこの作品では伝えようとしています

また一瞬の儚い美しさをどう伝えればいいか、ということにも意識を向けています

 

この女性の表情は四季のように移り変わっていきますね

 

純粋に美しいものよりも、その美しさの奥に傷が入り混じっていることに私は心を打たれます

 

終盤にみせる彼女の笑顔の美しさは傷ついたあとのものです



美しいものとは
儚くて余情の残るもの


そして風は散らすが水は過去から現在、未来へとつながっていきます

 

日本という国は風ではなく、水の世界ではないかと感じます

 

 


失われるからこそ一瞬というものが永遠になるんだと思うんですが、

 

ここに描かれている繊細な女性の日常の一瞬は

 

日本人の感性を現しているように感じませんか
 

 


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