新しい土地に来ると感覚が慣れるまで一週間くらいはかかる
ある日、自分の感覚が変わってきたのに気がついた
宿で本棚を見た時だ
都内にいる時ならこういう違和感は感じなかった気がする
町から少し離れた、夜には街灯も人影もないような場所に宿泊した
その周りには山と森、それと海しか見えない山小屋の造りの簡素な宿で、
近くにあるのはバス停以外にはなく、Wifiも届かない
自分が本棚を見つけたのはそんな宿のリビングだった
自分以外には宿泊者もいない
夏目漱石や西洋の文豪などの全集がぎっしりと並べられていた
でもそこに違和感を感じた
こんな空間には言葉というのは無力だな
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こんなところにくると言葉の説得力がなくなる
自然の存在感が増して、そもそも人間自体に説得力がなくなってくる
この島に来てからしょっちゅう天候が変わる、スケジュールが狂う
屋久島からの飛行機は欠航した
今日も帰れなかった
自然が主役になってくる
人間が目立たなくなってしまい
この環境に合わせて生活をするしかない
わけのわからないのは人間よりも自然
そういう感覚が強くなってくる
自然に囲まれていると人間よりも自然の表情に視線がいく
都会で育ったせいか、ふだんから僕は人の表情の方に意識が向く
仕事に活きているからこれはいいんだけども、
人間の心の状態と行動の関係をみることに関心がある
でも自然の中にいくとそんなことすらどうでもよくなる
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都会ではなくこういう島に生まれて育ったら
もう少し違う人間になっていたのかもしれないなと感じた
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